顔料インクと染料インクはどう違うの?
我々人類は、衣服などに着色する材料として、昔は天然由来の素材である植物の色を染め付けたり、岩や土などを砕いたものを素材としたりして参りました。染料(dye)が前者で、顔料(pigment)が後者のイメージにあたります。 一般に染料は水や油に溶けますが、顔料も微細な粒子ではありますが、これらに溶けず、混ざっています。 このため、染料は紙や繊維の中にまで入り込んでいきますが、他方、表面に付着しているのが顔料です。
紙に筆記した場合どう違うの?
 1.の特性から、インクとして紙面に筆記した場合、染料は発色が良い一方で滲みやすく、顔料は耐水性・耐光性に優れています。 また、顔料インクが滲みが少ないことから、描いた筆記線や筆記線と筆記線の交差点が染料に比べて比較的くっきりと出るのも特徴と言えましょう。
粒子が大きいとされている顔料インクは目詰まりの心配はないの?
溶けている染料に比べて顔料がペン芯の中で詰まりやすいイメージがあるのは、認識として正しいです。 ただ、染料インクであっても起こるインク詰まりは、長いあいだ万年筆を使わずにカートリッジやコンバーターを万年筆に装着していることで、 インクが乾燥してペン芯に付着することが原因の大半です。  よくお客様から、『全然使っていないのにインクが出ない』とのお話をお聞きしますが、万年筆は私たち人間の体と同じで、運動をして体と共に体内の血液を循環させることで、いつも フレッシュな血液(インク)が保てます。万年筆をどんどん使って上げてください。 また長期間使用しない場合は、カートリッジを外して、綺麗に洗浄と乾燥をして保管しておいてあげてください。 そうすればきっと、またご使用時にスラスラとインクも出てくれると思います。  尚、10年前のことですが、ある大手プリンターメーカーの技術者の方が、顔料インクプリンターの研究のために当社の顔料インクを分析したところ、その粒径(ひとつひとつの粒子の直径)が 当時のプリンターインクの粒径よりも小さくて驚かれたことがありました。今はどうか不明ですが、30-40年前に発売した当社の顔料インクのすごさに、こちらも驚いた記憶があります。 また、当社の #3776センチュリー万年筆は、全く使わずにインクを入れた状態でも1年後でも筆記をする事ができます。最も多い万年筆の泣き所であったインクの乾燥に よるインク詰まりやインク出不良が解消され、顔料インクでも染料インクでもいつでも新鮮なインクの状態でお楽しみ頂けます。(これはコマーシャルです)
使用しているインクの色などを変えてもいいのですが?
 万年筆の楽しみは、自分にあったマイルドな筆記感覚とともに、そこから筆記されるインクの美しさであると言えます。折角巡りあったご自分の万年筆ですから、 ご自分の好みの色のインクで演出するワクワク感は、何とも言えないものですので、インクの変更も当然にあることですね。 ただし、インクは他社のインクはもとより、プラチナのインク同士でも変更時に気をつけてください。これも、インク詰まりの原因のひとつとなります。  顔料インクと染料インクの取替えや染料同士の取替えも同じことで、顔料・染料というよりもインクの組成に大きく影響付けているPh(ペーハー)が大切な要因となります。 小学校の理科の実験以来この“ペーハー”という言葉をお聞きになった方も多いと思いますが、要するにインクが酸性(Ph6以下)かアルカリ性(Ph8以上)かとお考え下さい。  プラチナのインクは、染料のブルーブラックインク(酸性:このインクの面白いところは後述致します。)と ミクサブルインクのアクアブルー(中性)以外は顔料インクでも染料インクでもすべてアルカリ性です この中で、 ①酸性インクと中性かアルカリ性インクが混合しますと、インクの組成に変化が生じますので特にご注意下さい。 ②また、中性とアルカリ性のインクの間でも、染料インクと顔料インクの混合はできません。 ③顔料インク同士の混合は不可能ではありませんが、色目がくすんでいきますのでご注意下さい。 ④尚、ミックスフリーインク同士のインクの混合などは問題ありません。
インクを今のものから他のものに交換する時に注意することはなんですか?
 インクの色替えなどをする際には、インククリーナーキットをお使いください。 このキットを使用して、洗浄後によく水洗いをしてからティッシュなどで完全に水分を取り除いてからインクカートリッジ等を装着して下さい。水分がペン芯に残っていたりすると書き出しの色が薄くなることもありますので ご留意のほどを。 尚、水のみでの洗浄もOKですが、インククリーナーの方が効果大です。(これはコマーシャルではなく)特に酸性からアルカリ性や中性のインクへの交換やまたその逆の場合はこのキットでの操作を確実に行ってください。 インククリーナーの洗浄液自体は、アルカリ性ですので水洗いを十分に行ってください。
ブルーブラックインクのこと
 ブルーブラックインクは、私たちプラチナのブランドを代表するアイテムの内のひとつです。 万年筆が、ビジネスツールとしてその中心に位置していた昭和の時期に、公文書や医療に使用されるカルテに代表される準公文書の様な長期保存を要求される用途に開発されたのが、 このブルーブラックインクです。このインクは先ほどからご案内させて頂いている顔料ではなく、染料ですが長期保存に耐えられるものです。  では、どうして染料なのに長期間そのインクが保持出来るのでしょうか?  顔料インクを万年筆に使用することが技術的に困難であった当時、青の染料とタンニン酸第一鉄を配合し、筆記後空気中で酸化されタンニン酸第一鉄となる のがこのブルーブラックです。難しいことは割愛しますが、このタンニン酸第一鉄はインクの中に特別な方法で配合しています。  この為に、筆記してある一定期間は、その色は青(ブルー)ですが、この染料のブルーがいずれ退色した後に残った鉄のみが紙面に固着して、色としては黒色(ブラック)のみが残ります。 初めはブルーで、後年ブラックになるためこのインクを『ブルー・ブラック』インクと呼んでおり、色目というよりもこの名前はその機能に由来すると言えましょう。    ブルーブラックインクは酸性 この特殊性から、何ともいえない色の濃淡が万年筆のペン先の弾力による筆記線幅の個性的な抑揚と共に得られ根強いご支持を頂いておりますが、 この特殊性もあり、プラチナのブルーインクは唯一酸性です。よって、他のインクに交換するなどの際には他のどのインクよりも注意が必要となります。また、古い万年筆などには、筆記する際に 皆さまが持つグリップ部分の先端が金メッキのものがあります。  金そのものは腐蝕することはありませんが、この部分やペン先自体が金ではなく金メッキなどですと、メンテナンスを十分にせずにインクが付着していると、腐蝕(さび)てくることもあります。  これらのことから、現在では殆どのメーカーが、このブルーブラック(BB)インクを生産停止としておりますが、しっかりとしたご案内をし続けることで、このインクのもつ本来の良い点が活きてくると私達は考えております。
クラシックインクについて
 ブルーブラックと同様、伝統の製法で作ったのがクラシックインク。現在は、6色ラインナップしています。 染料インクと異なり、耐水性 と長期保存性があります。  また、書き始めは鮮やかな染料色をしていますが、時間の経過とともに、その筆跡が黒く変化することや筆跡の濃淡が より一層強調され、書いた文字がより味わい深い物となることから、書く楽しみを味わえるインクといえます。